くうせき

 

久しぶりに自分の席に行けました。

 

2日間の間に貯まった書類が、机の上に山積みになっていました。

 

過ぎた分の時間の堆積を可視化した机でした。

 

出勤して最初に見たその光景に、私は学校の先生になりたかった学生時代を思い出していました。

 

 

 

きっかけは高校生の時の経験でした。

 

安穏と過ごしていた中学までの日々と違い、勉強についていけず、悩みは尽きず、友達や家族ともぶつかって、そんな自分がとにかく嫌だった頃。

 

そして、事あるごとに泣いてしまう、心がとても不安定な時でした。

 

ちょっとしたことで涙が出て、周りの友達に迷惑をかけるのも申し訳なく思っていたし、誰よりも自分が自分に呆れていたように思います。

 

 

 

教室で数学の授業を受けていた時、その場で急に涙が出てきたことがありました。

 

わけがわからなくて戸惑ったけれど、教室の真ん中の席だったから、とにかく誰にもバレないように、静かに頬を拭ってやりすごしました。

 

 

 

 

私が先生になろうと思ったのは、そんな経験があったからでした。

 

教室の中に空席があるならば、そのひとりぶんの空席の意味を、深く考えられる先生になりたいと思っていました。

 

 

 

 

「ああ、そういえば私、先生になりたかったんだったなあ」

 

それが、書類が山積した自席をみて、最初に頭に思い浮かんだことでした。

 

 

私は結局、先生ではなく別の仕事に就きました。

 

意欲は別としても、体力的・精神的な適性という部分から、私は先生に向いていなかっただろう、と思うことも度々あります。

 

でも、職種関係なく、今日の朝の気持ちは忘れたくないなと思います。

 

とりあえず今日は、夕方まで勤務ができてよかった。

「自分に大きな花丸をあげましょう。」

もし今ここに、あの高校生の頃にお世話になった先生がいらっしゃれば、そうおっしゃってくれると思います。